Connecting The Dots

クラウドIT顧問 山崎ジョー吉のブログです。

2010年最初に読んだ本は「フリー」

2010年最初に読んだ本は11月の下旬に購入し、今ベストセラーの「フリー」。
この本は「ロングテール」の著者(クリス・アンダーソン)が描く21世紀の経済モデル「フリーミアム」という新しいビジネスモデルを提唱し、ビット世界の無料経済に正面から取り組んだニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。日本が直面しているデフレの原因を理解するのに役立つ。

デジタル化と中国などの新興国の工業化に伴ない、IT産業のソフトやハードなど容易にコピー可能なものは新興国によって容易にコピーされてしまう。いくら産業財産権を主張してもコピーは止まらない。なぜならば、彼らは所得が少ないから高額なロイヤリティを支払えないからだ。また、産業財産権の侵害が犯罪だという認識が希薄だからだ。

一方、日本は月収が数千円のアジアの新興国には日本の高性能か高価な家電製品や乗用車は買えないと思っていた。また、もし、新興国の所得水準に応じた金額の製品を新興国向けに開発し販売すると、日本国内で販売している製品に価格に影響を与えると考えていた。さらに、新興国には日本の高度な技術をコピー出来ないと思い込んでいたのだ。

あくまでも中国などの新興国は安価な労働力の工場であって、そこで生産される製品のターゲットには直ぐには彼らはならないと考えていた。ところが、沿岸部を中心にニューリッチ層が出現し、高額な製品が売れ始めたのである。その多くは中国メーカー製で、韓国、台湾メーカー勢がそれに続く。日本人には馴染みの無い中国メーカーだが、見た目は日本製とそう変わらない。機能を細かく比較すると日本製の方が高機能だが、中国製は必要な機能は満たしている上に安い。電子レンジだって普段使うボタンは時間とスタートボタンだけだ。確かに分解してみると配線の美しさや省エネ、安全性の面では日本製の方が良いことがわかるが、ユーザーは知る由もない。つまり、日本製だから値段が高い理由を説明することができない。

家電に先駆けて国際競争の波にさらされたのはPC業界だ。以前からも台湾製品は秋葉のショップで販売されていた。しかしながら、動作保証や日本語化されたマニュアルが添付されている日本製の方に部が合った。ところが、台湾メーカーが日本のユーザーの趣向を理解し、(正しい日本語とは言い切れない)日本語マニュアルと1年保証をつけた製品を自分のブランドでの販売を開始したことから、日本勢の苦戦は始まったのだ。ネットブックや液晶、さらには携帯電話の分野にASUSACER、BANQ、LG、SAMSUNGなどのアジア勢が参入。ホームであぐらをかいていた日本メーカーは価格下落に襲われた。さらに、イーモバイルとのコラボによる1円PCが追い打ちをかけた。これがフリーだ。

押し寄せてきたフリーの波は止まることを知らない。PC本体の価格が下がれば関連する周辺機器全ての価格が下落するのは当然だ。テレビも例外ではない。ただし、日本の地デジは窮屈なまでの著作権保護技術の実装を強いられ保護されているので、グローバルに展開されているテレビをそのまま日本で販売することはできないので、一応保護されている。ところが、そのせいで、日本のテレビを海外で競争力のある価格で販売することができないのだ。

ソフトだけでなくハードにもフリーの波は押し寄せてきている。その波にさらわれないようにするには、容易にコピー出来ない様にする事しか無い。それは特許や規制による保護では無い。例えば、日本は世界有数の長寿国だ。長寿は数年でコピーすることはできない。安全や平和も世界の中でも日本が最も優れている。こういった分野を伸ばし、日本と言う国のブランディングを再度行うことが、フリーに打ち勝つための手段であり、デフレ脱出のための解だ。お札を大量に印刷しインフレを起こす事がデフレ脱出の方法では決して無いはずだ。