Connecting The Dots

クラウドIT顧問 山崎ジョー吉のブログです。

大塚商会のLED導入事例集に学ぶ、脱価格戦略のヒント

マーケティングの教科書の最初に出てくるキーワードの一つに"4P"というのがある。

  • Product(製品)
  • Place(販売チャネル)
  • Promotion(宣伝)
  • Price(価格)

これらを組み合わせることをマーケティング・ミックスといい、ターゲット市場から期待する反応を引き出すために用いる売り手の立場から見たマーケティング・ツールの事を"4P"という。売り手である企業の営業担当者とバイヤーの間で最も良く出る"P"は恐らく"Price"ではなかろうか。費用対効果が測定しにくい広告予算(Promotion)が削減され、製品(Product)も競合との差別化が図れず、販売チャネル(Place)についても新規開拓は手間がかかるので、結局、安易な値下げ(Price)に踏み切るしかない。

ユニクロのような大規模なSPA(製造小売)ではない企業はコスト優位性に乏しく、価格面では競争できない。ボリュームが見込めない以上、宣伝や販売支援のためのコストも当然少ない。利益が少ないので研究開発費も減らさざるを得ない。まさに悪循環である。多くの製品群が価格競争に陥り苦しんでいるが、見方を変えれば、多くの業種、カテゴリにおいて新規参入の障壁が下がり、逆にチャンスが増加しているともいえる。

LED照明市場を例に取って見てみよう。LED照明とは、発光ダイオード (LED) を使用した照明器具のことで、1990年代に青色発光ダイオードが開発されて以降、LEDによる白色光照明の実用可能性が高まり、CO2削減や原油高騰を追い風に販売が急増し市場は急成長している。長寿命・高信頼性かつ低消費電力がLED照明の特徴だが、価格が高く、普及には時間がかかると思われていたが、2009年の7月に東芝が低価格での参入を発表したことで、一気に価格が下がり、現在では、シャープ、パナソニックだけでなく、化学メーカーなどが参入するなど、一気に市場が拡大している。だが、一方で急速な価格の下落から撤退をする企業も出現。

そんな中、企業向けOA機器の販売から、コンピュータ、コピーなどを含めたシステム機器販売と、導入支援、教育、保守までをトータルでカバーする大塚商会が韓国メーカーのLED照明の販売で健闘している。店頭では大塚商会のLED電球を見ることは無いが、現場を知り尽くしている大塚商会は、様々な導入事例を同社のサイト上で紹介することで販売を伸ばしているようだ。この事例をユーザーが見れば、LED照明に交換することで、日頃困っている点がカイゼンされる事が一目瞭然。

■導入事例(抜粋)

  • モノレール会社の場合だと、天井が高い場所にある白熱灯の交換にいつも困っていたが、長寿命のLEDに交換することで電球の交換の頻度が一気に減った。
  • 回転寿司の場合、従来のハロゲン電球では寿司のネタが傷みやすく鮮度が落ちてしまうという見解があったが、LEDに変えることによって軽減された。
  • 商品の販売店では、商品の色あせが気になっていたが、LEDにすることで変色を防ぐことができた。
  • ○○文化センターでは、紫外線の放出が少なく、虫が寄り付かなくなった。

LED照明の特徴の説明文を見ると、長寿命・高信頼性かつ低消費電力の省エネであることばかりで、白熱電球や蛍光灯との1年あたりの電気代の差とLED照明の購入価格のどっちが安いかでLED照明にするかどうかを決めるしかなかったが、大塚商会では、様々な業種、シーンにおいて、それ以外のメリットがある点を明らかにしている。この事例を見た営業マンは、まずは、自分の顧客リストから該当企業をピックアップし直ぐに提案ができる優れものだ。

ここには単なる物売りとは異なり、日頃から顧客との対話を重ねることで、顧客が何を求めていて、何を困っているか、また、諦めているかを、見い出し、解消するための提案を行っている。ここに脱価格戦略のヒントがたくさん隠されているといえる。

大塚商会のLED照明の導入事例