2011年最初の書評「おゆとりさま消費:牛窪恵(著) 」
昨年あたりから「ゆとり教育」の世代が社会人デビューしてきている。朝カフェのメンバーにも新入社員の女子が二人参加しているが、どちらも「ゆとり!」を感じさせるようなタイプではない。ただ、ここ数年は、”やんちゃ”なタイプの新入社員は少なく、どちらかというと、”おとなしく”て、お利口さんが多いなんて言う人もいるが、”やんちゃな”子はやっぱり”やんちゃ”で、”おとなしい”子はやっぱり”おとなしい”。これは世代というよりも育った環境や性格の問題だと思う。
さて、今年最初に読んだ本のタイトルは「おゆとりさま消費」牛窪恵(著) だ。”おゆとりさま”とはゆとり教育を受けて育った世代の事を意味する。長年の詰め込み教育への反省から、文部省がゆとり教育の導入を目指し教育課程の改訂を発表したのが、1989年。小・中学校では2002年度から、高等学校では2003年度から新学習指導要領が取り入れられた。2003年度に高校1年だった子供たちが大学を卒業し就職した始めたのが昨年というわけだ。
本書では、おゆとりさまの特徴を次のように表している。
- 競争しない
- ガツガツしたくない
- 生まれた時にはバブルは崩壊していて、右肩下がりの時代しか経験していない
- 物心ついた時からインターネットは普及していた
- モノ余り世代で、買い急ぐ必要もなく、とくに欲しいものは無い
- 物欲よりもコミュニケーション欲
- ゆるいつながりを好む
- 両親と友達のように仲が良い
- 見栄を張るための車や高級ブランドに興味がない
- 会社づきあいのための酒に興味がない
また、彼らがお手本としているのは、「行列ができる法律相談所」の島田紳助ではなく、ひな壇に座っている芸人だと表現している。これについては「なるほど〜」と共感できる。これは見方を変えると謙虚さのようにも感じるが、実際は相手を立てているわけではなく、単にガツガツしたくないだけ、面倒くさいだけのようだ。これについては年齢が重ねることによる欲求の変化によって徐々に変化してくるとは思うが、会社の上長や先輩が、殻を破るためのチャンスを与えないと、欲求のステージチェンジが遅れ、本人の成長が遅れる可能性があるため注意が必要だ。
おゆとりさまをパッとイメージすると、はっきりしない、なよなよした、じれったい、といった感じを受けるが、一方で、環境や社会に配慮した商品を選択するといったエコシルリカルな消費行動を取ったりするなど、意外と「イイ子ちゃん」だったりする。
おゆとりさまは、積極的な消費をしない、すなわち、低価格が衝動買いのきっかけにはならないことから、この世代の欲求を目指すモノづくりとアプローチが必要だ。また、KYを嫌うことから、グルーポンのような「共同」はキーワードの一つになりそうだ。
20代の若い世代がターゲットの商品やサービスを提供するマーケッターだけでなく、中間管理職も必読の一冊。