Connecting The Dots

クラウドIT顧問 山崎ジョー吉のブログです。

世界中から視察団が訪れる埼玉の産廃業者「石坂産業」で事業を親から子への継承するヒントを学ぶ

実はそんなにスゴイ会社があるなんて知らなかった。

NPO法人「いい会社をふやしましょう」の代表理事の江口さんに2014年末に某大学で行われた講演に誘われるまでは・・・。所沢ダイオキシン問題の話を聞いて「そう言えばそんなことがあったなぁ」と。

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1年間に千人近くの人と会って話をするけど、石坂産業の石坂典子さんは2014年の中では一番印象に残った人だ。

どんな人かと言うととっても普通の人。普通の女子大生が海外に留学して遊び呆けていたら、父親に帰って来いと怒られて、当時アメリカで流行っていたネイルサロンを日本で始めるために、イベントコンパニオンを始めたら、また父親に怒られてしまい、父親の会社を手伝うことに。

そして、1999年テレビ朝日のニュース番組で所沢の葉野菜にダイオキシンが付着しているとの報道が引き金になり、野菜が全く売れなくなり、産廃銀座と言われていた同地区の産業廃棄物業者は移転か廃業を余儀なくされた。同社は多額の投資を行い、ダイオキシンが出ない焼却炉を導入したが、住民の感情は収まらず、窮地に追い込まれた。 

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そんな時、社長の娘である石坂典子さんは父親に「どうして、産廃業者を始めたの?」と尋ねたら、「3代、4代続く会社にしたい」との答えが、それを聞いた典子さんは「社長をやらせて欲しい」と嘆願。最初は一蹴したものの、1年間の期間限定で社長をやらせてもらうことになったそうだ。

事業を継承する場合は、業績が良い状態で渡したいのが心情ではあるが、窮地に追い込まれた時に継承するほうが、経営者としての成長が早まることから良いという話も聞くが、継承者には信じられないくらいの勇気と精神力が必要だ。緊急事態の前後で社長に就任した最近の例ではトヨタ自動車豊田章男氏、日航稲盛和夫氏、現在再生中のベネッセの原田泳幸氏など。大塚家具はこれから?

社長に就任した石坂典子さんはガテン系のオトコだらけの会社を、今では多くの女性が働く会社へと大きく変えた。どうやって変えたかは、石坂典子さんの書籍「絶体絶命でも世界一愛される会社に変える! ―2代目女性社長の号泣戦記」に詳しく書いてあるのでそちらを読んで欲しい。

さて、工場見学の内容と様子は一緒に見学に行った仲間のレポートに詳しく書かれているので、私は今後見学に行こうとしている人のためのポイントをレポートしたいと思う。

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おもてなしを実現するためには、見学者一人ひとりの会話に耳を傾け、行動をウオッチすることだ

わずか19名の見学ツアーに社員さんが3名。常に誰かが見学者の側についていてくれる。しかも、見学ツアーは朝10時に最寄り駅までバスで迎えに来てくれ、16時に駅まで送り届けてくれるまで6時間も間、ずっともてなしてくれる。今回のツアーで初めて会う人もいたので、バスの中で自己紹介をしていたら、メモをしながら耳を傾けているスタッフを見ると、高級ホテルや旅館の女将のようだ。

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バスの運転手をしていた社員さんは、ガッチリした身体つきからは考えられないくらい、話し方が丁寧で、かつ、プレゼンが上手い。また、オリエンテーションの時にお腹がぐーっとないていた人がいたのかもしれないが、工場内に行く前に羊羹をもてなしてくれたり、やや肌寒かったこともあり、コートを用意してくれたり。毎月、多くの見学者が訪れるとはいえ、マニュアル通りに行っているのではなく、見学者一人ひとりの様子を見ながら自主的に行動をしている事がわかる。

遠くにいても笑顔で会釈をしてくれる社員のみなさん

見られることで変わる。遠くに居て、目の悪い人なら挨拶をしてもわからない距離でも、ニコッとしながら挨拶をする社員さんが多い。というか全員そうだ。しかも、話しかけたらちゃんと説明してくれる。

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とにかくキレイ

 国内の工場を幾つも訪問したことはあるが、国内のどこの工場も整理整頓されているのは当たり前だが、同社のトイレのキレイさにはビックリ。水滴が一滴も残っていない手洗い場では、利用者が使ったあとに自分が残した水滴を拭きたくなるほど。

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とにかく広い

東京ドーム3.5個分の敷地は本当に広い。8割が里山とのことだが、それを保全するのは大変なことだと思う。

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最後にミニワークショップを行って見学者の感想(本音)を引き出す

まさか、最後にワークショップが合って、グループごとに発表をさせられるとは予想外のことだった。来場者アンケートを書くというのは良くある話だが、良し悪しを聞いても、ほとんどの人が「良かった」を選ぶに決まっているし、コメント欄には「大変勉強になりました。ありがとうございました」のようなコメントを書くだけで具体的な気付きを得るのは難しい。したがって、最後に振り返りのワークショップをするのは面白い取り組みだと思う。今日、印象に残ったことをキーワードで出して付箋に書き出し、そこからいくつかを選んでタイトルとストーリーを作って発表させれば、見学者の記憶に残すこともできる。

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事業を親から子への継承する際のヒント

大塚家具の経営方針について親子での争いが話題になっていたが、同社でも石坂典子さんが社長になった後でも会長の父親からは様々な口出しがあったそうだ。創業者の思いというのは強いのは当然のこと。しかしながら、時代の変化に応じて経営方針や手法も変えていかなければならない。その変化に対応出来ない経営者は交代すべき。親子で同じ会社に居るというのはやはりやりにくい時が良くあり、決めたことに対してチャチャを入れてくる会長である父親に娘の石坂典子さんはにこう言ったそうだ。「今後も経営に口を出すなら、私は社長を辞める」その後、会長は会社には来なくなったそうだ。

10年先、30年先、100年先の未来のあり方をイメージし、それを実現するためにやるべき事業内容を決めている

土曜日に10時から16時までの間、3人の社員をもてなす、工場の4倍以上もの敷地、里山保全。どう考えても、利潤を追求するのが目的とされる企業活動において、利益を生まないこれらの活動は無駄とも言える内容だ。見学会や講演会で良く聞かれる質問だそうだ。同社は創業者の「3代、4代続く会社にしたい」という地域と共に永続企業を目指すために、100年後のイメージ作りをした上で、それを実現するためにやるべき事をしているだけだという。

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人間の平均寿命は年々伸びているのに、IT企業で良く言われるドッグイヤーのように企業の平均寿命は短くなっているような感じがする。企業の寿命が30年だとしたら、全ての会社員は一度は転職をしなければならない計算となる。国の経済が企業の体力の集合だとしたら、新しい企業を数多く生み出す事も大切だが、強くて大きい企業は新陳代謝を続けながら寿命を伸ばし永続企業を目指すべきだと言える。

そのためには社会の変化に敏速に対応するよりも、未来を作っていくための活動をし影響与えていく方が良いはずだ。石坂産業はそんな未来をしっかりとイメージをし、その目標に向けた事業活動を行っている企業だといえる。

以前、大久保寛司氏が「良い会社」の共通点が、「キレイ」と「あいさつ」だと言っていたが、それに加えるとすれば、「100年先の未来を社会を考える力とその実現に向けての行動力」が、今回石坂産業を訪問して感じた「良い会社」の定義だ。

昨年末に本を出版してから講演会やテレビなどに引っ張りだこの石坂典子さん。見学も予約が取りづらいかもしれないが、一度は訪れた方が良い会社だ。

終日おもてなしをしてくれた3人の社員と、お忙しい中、お話を聞かせてくれた石坂典子社長に改めて感謝したいと思う。ありがとうございました。

 

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今回参加したメンバーのブログ

大人の工場見学会<第一部>石坂産業 | chika-sk.net

見学に行く前に本を読んでね

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