Connecting The Dots

クラウドIT顧問 山崎ジョー吉のブログです。

「まねきTV事件」破棄差し戻しって?あのね!

海外からインターネット経由で自宅にアクセスし、日本のテレビを観る事ができる機器をソニーが販売している。製品の名前はロケーションフリーロケフリ)。地デジが普及し始める前、5、6年前に人気があった製品だ。

永野商店という会社が、ユーザーからロケフリを預かる、いわゆるハウジングサービスの名称の事が「マネキTV」だ。2006年にTV局が、「マネキTV」が放送事業者が持つ著作隣接権の1つである「送信可能可権」を侵害しているとして訴えた。

これが「まねきTV事件」で、日本のテレビ番組をインターネット経由で海外でも視聴可能にしたサービスは著作権法違反だとして、NHKと在京民放5社が、サービスを運営する「永野商店」に対して、事業差し止めなどを求めた訴訟の上告審判決が18日、最高裁第3小法廷であった。

同小法廷は、このサービスが著作権侵害にあたるとの初判断を示し、テレビ局側敗訴の1、2審判決を破棄、審理を知財高裁に差し戻した。

この判決は明らかにおかしい。そもそも、テレビ放送のインターネットでの再送信は放送されている地域に限定するなどという、インターネットにエリアでの制限を設けるという意味不明の著作権法改正から始まっている。したがって、放送エリア越えをしたテレビ番組のネットでの再送信は、送信可能化権公衆送信権を侵害しているというのだ。

しかも、ロケフリのように不特定多数に対する送信ではなく、単一の機器宛てに送信する場合でも、「当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるときは自動公衆送信装置に当たる」というんだから、ロケフリそのものも
規制対象であるという事になる。しかも、これを拡大解釈すると、ハブやルーターまでもが規制対象と解釈する事もできる。

そうなると、テレビ局が(一応)積極的に進めている、見逃し番組のネット配信サービス自体も違法だということいなりかねない。そもそも、ネットでの放送の再配信(番組の配信)にエリア制限をもうけるという事自体がナンセンスで、むしろ、ローカルテレビ局自信も業界再編し、エリアをある程度拡大していく必要があるのではなかろうか。

この裁判は間もなく停波になるアナログ放送での話で、地デジ版のロケフリは国内では販売されていない。暗号化されていないところに地デジの番組を流す事が認められてないからだ。地デジチューナーから出力された番組をアナログで出力しそれを再デジタル化することで、高解像度での再配信を個人的に実現しているユーザーは存在しているようだが、著作権の壁が高く、「まねきTV事件」のようなサービスや機器は公には提供されてはいないようだ。

地デジになって画面は大きく、キレイになったがアナログの時に比べると、録画時の利便性は大幅というよりも極端に悪くなった。録画した番組を友達に貸す事がきわめて難しいからだ。ブルーレイに番組をダビング10でコピーするしかないのだ。USB-HDDに録画しているユーザーは録画番組を友達に貸す事ができないのだ。

コンテンツの著作権を保護する事も重要だが、利用者の利便性を極端に制限をしてはいけない。規制すればするほど利用者は減るからだ。いくら国内で規制をしても、中国や韓国のWebサイトに日本のドラマがほとんどアップされているのだから、今回の判決も事実上意味はなしていないだけじゃなく、コンテンツの再利用による収益化のチャンスをみすみす逃してしまっている。

もうちょっと、番組の視聴者の絞るのではなく拡大する施策と、著作者の権利を保護する、その双方にメリットがあるような判断をしてほしいものだ。