本が売れない原因は図書館は本を無料で貸し出すから?
キングコングの西野氏が新著でベストセラーの「革命のファンファーレ」を全国の図書館に無償で寄贈するとブログに投稿。
「太っ腹〜」と 言ってしまえばそれまでだが、広告宣伝費として果たして採算が合うのかどうなのかが気になるところなので、ざっくり試算してみた。
書籍の購入費:1,500円 x 5,500冊=825万円
印税:仮に10%だとしたら約82.5万円
送料:仮に150円だとしたら約82.5万円
送料は印税で賄えるとしたら、今回の図書館への寄贈にかかるコストはなんと825万円!
このコスト825万円を印税で回収するためには、55,000部売らなくちゃいけない。
発売から6日間で10万部を突破したとのことだが、55,000部は大きな数字。
普通の会社なら、販促キャンペーンの広告費として捉えると決済が下りそうにない。
では、なぜそこまでやるのか?
彼は、今回の図書館への寄贈を、「本が売れないのは図書館がタダで本を貸し出すから」という見方に対する検証だと発言している。しかし、この本の次ぎのアクションに対する先行投資なんだと思う。
革命のファンファーレにも書いてあるが、お金の回収はあとのほうが金額が大きくなる。通常であれば本の販促に使った販促費はその本の売上で回収し収支を計算すべきだが、彼は既に次のステージで移っているのではないか?
今年のハロウィンで新しい仕掛けをするのか、はたまた何か違うことをするのか?
それはさておき、個人的には図書館のあり方を見直すべきタイミングにあると思う。
西野氏が今回の検証をしなくても、図書館の存在が本の売上が影響を与えているかは、データを分析すればわかるはず。
例えば、ベストセラーなどある程度売れている新著を幾つかセレクトし、図書館ごとの複本の実態と貸出回数を時系列で分析。さらに、図書館の利用頻度を調査し、新著をいつも借りている人が全体のどれくらいを調べる。
図書館によっては貸出予約が殺到しているような売れ筋の本を何冊も購入しているとしたら、確かに売上に影響を与えているかもしれないが、ほんの一部の人が新著を借りまくっているとしたら、影響は少ない。
いずれにせよ、新書は発売から一定期間は貸出を禁止するとか、月あたりの貸出冊数を制限するなど、調整する方法はあるはず。
ただ、出版社からすると全国の図書館が5,500箇所だとしたら、2冊ずつ買ってもらえれば1万部は超える。最近では3万部売れればベストセラーだと言われるようなので、図書館は良いお客さんだと言う見方もある。店舗数が多いが商品の特徴を説明するよりも、直ぐに安売りをする大手家電量販店に似ている。
実は、出版社(本屋さん)対 図書館という構図ではなく、西野氏も主張しているように、人の生活における読書の時間をスマホなどに奪われてしまっているのが原因で、そこに学ばなくなった大人が居て、労働生産性の低下の原因にもつながっているのではないだろうか。
※出典:
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2017」時系列分析|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ
から筆者が作成
メディアの接触時間がスマホに奪われていることからもわかるように、読書の時間が減少している。月に1冊も本を読まない人はかなりの割合を占めているのではないだろうか?
本によって読む力を強化が学びに繋がる。流行に惑わされず、歴史に学ぶ。図書館も本屋さんも読書の機会を増やすためにもっともっと知恵を発揮し行動すべきだと思う。